たくさんの生き物と共生する “里山管理人” と池のある古民家のお話

 Yさんご一家

妻 Yさん 40代 里山管理人(自称)

夫 Tさん 60代 海外出張など忙しい日々を送る。定年後はゆっくり過ごしたい。

飼い猫 金ちゃん(オス) 飼い犬 ピンク(メス)

 

京都市にほど近い場所ながら、田んぼや畑、豊かな里山が目いっぱいに広がる、京都府 綾部市。

そんな綾部市の古民家に二年前に移住した、Yさんを訪ねました。ご夫婦二人と犬、猫が一匹ずつの暮らしに、この春から新しい仲間が増えるそうです。

 

移住のきっかけ

no601

幼いころから昆虫や小動物が大好きだったYさん。

鳥取環境大学教授 小林 朋道先生の著書『先生、巨大コウモリが廊下を飛んでいます!』がきっかけとなり、鳥取環境大学に進学しビオトープについても学んだ。そして、生き物がたくさんいる自然の中の古民家で暮らしたいという思いが強くなった。

京都市内で仕事をするご主人の利便性も考え、市内から一時間圏内を目安に古民家を探していたところ、たまたま『里山ねっとあやべ(綾部市の定住サポートを行っているNPO法人)』主催の古民家を見学できるバスツアーがあると知り、冷やかし程度の気持ちで申し込んだ。

 

そこで十軒ほど見てまわった古民家のなかで一軒だけ、敷地内に池があった。その池には、Yさんの大好きな日本固有種のイモリである、アカハライモリが生息していた。

Yさんたちはその古民家を購入、修繕して現在住まわれている。

 

古民家での暮らし

 

no605

今では慣れた古民家生活だが、初めての冬はとにかく寒かったそうだ。特に寒さを感じたのは隙間風。

薪ストーブを設置したら、頭が割れるような寒さも解消した。初めて火入れをした時は、火の暖かさに感動したのを覚えている…とおっしゃっていた。

 

土間を直すにあたって、いくつかの工務店さんに相談したが、ほとんどの場合コンクリート土間を勧められた。しかし、ぜひ土の土間でという工務店さんに出会い、いろいろと考えた末、土の土間を残された。残してよかったと思っているそうだ。

土間ビフォアー

土間ビフォアー

土間アフター

土間アフター

 

現在の様子

 

古民家暮らしの楽しみは人によっていろいろあるが、Yさんは現在里山のビオトープの整備をする日々。

ビオトープとは、様々な生き物が互いに関わり合い、生態系を作る空間のことだ。

「私が暮らすところは『里山』です。里山とは人が暮らすために開拓された自然です。人が手を加え、田に水を引き、畑を耕すことで、たくさんの小動物や微生物も集まり、生態系のバランスが保たれています。

 

 

もしも田に水を引く人がいなくなれば、カエルはいなくなり、カエルを餌にする鳥も集まらなくなります。池の水を枯らせば、アカハライモリも子孫は残せないでしょう」

と、ご自身が〝里山管理人〟でありビオトープを守る生態系の一員であるということを話してくださった。

 

Yさんのビオトープ管理によって、自宅前にある池にはアカハライモリが元気に生息し、天然記念物のモリアオガエルも産卵にくる。

たくさんの生き物に囲まれた暮らしに、満足しているそうだ。

地域によっては絶滅寸前に追いやられているカヤネズミが、Yさん宅の周りにも生息していることを知ると『全国カヤネズミ・ネットワーク』に入会し、独自でカヤネズミの生態調査にも乗り出している。

 

 

これからのこと

 

no606

Yさんは、このまま里山管理人としての役割を続けていきたい、様々な生き物が暮らすビオトープを維持することで、野生動物や昆虫が永遠に里山で繁栄してほしいと語ってくれた。

「田 んぼを始めるとき、トラクターを近所の方が譲ってくださったものの、使用しませんでした。冬眠中の蛙や小動物が死んでしまい、土がいずれ痩せてしまうから です。田植えや稲刈りもすべて人力でしているため、まだまだ収穫が上手くできませんが、職人さんも十年で一人前なら、私も十年以内で成功したい」

 

「草刈りでも薬剤を使うことはなく、草刈機で刈り込むこともしない。理由は、カヤネズミをはじめバッタやカエルなどを殺してしまうからです。外来種は刈り取り、草地が草地であるための最低限度の草刈りを実践しています」とのことだ。

Yさん宅ではこの春からヤギを飼うことにしており、現在、移住当初母屋のリフォームをお願いした工務店さんとヤギ小屋新築を計画中。家畜としてではなく、除草分担の狙いとYさんの愛玩のためだ。

Yさんは『山羊ノート』を作って、ヤギとの暮らしを研究されている。暑さに弱く、蚊さされにも弱いと聞くが、これからの楽しみだと嬉しそうに話してくれた。新しい家族がやってきたころに、また訪ねてみたいと思う。

no609

 

 

Y様邸 DATA

◎敷地坪数/ 約200坪

◎建物坪数/ 約44坪

 

建物工事内訳

 

・キッチン、トイレなど水道設備工事費 ¥800,000-

・土間工事など(30㎡) ¥600,000-

・傷んだ部分の修理、建て合わせなど ¥800,000-

・暖炉、煙突設置工事 ¥600,000-

・その他 ¥500,000-

・農機具のトラクター ¥400,000の購入を考えたが、

ご近所から2台を譲り受けた。

室内ビフォアー

室内ビフォアー

室内アフター

室内アフター

 

綾部市こんなとこ

 

綾部市睦寄町には、国宝に指定されている光明寺 仁王門があります。

一級河川である由良川が流れ、夏に行われる市内最大イベントのあやべ水無月まつりでは、由良川の中州から花火が打ち上げられます。

温泉施設もあるので、観光にも良さそうですね!

定住支援のサポートも手厚く、就職や就農の相談にも乗ってもらえます。山に囲まれたゆったりとした暮らしを求め、移住者も多いまちです。

 

参考:里山ねっと・あやべ→ http://ayabesatoyama.net  あやべ定住サポート→ http://www.ayabe-teijyu.org