日本海に面する富山県射水市の内川・新湊地区は、近世から廻船業と漁業で栄え、江戸時代には北前船の中継地でもあった港町。
内川は富山新港沿いを東西に結ぶ約三・五キロの運河で、漁船が連なり繋留される景観や、十の個性的な橋がかかることから日本のベニスとも評される。
内川沿いには間口が狭い切妻造りの民家が建ち並ぶが、築五十年の当古民家は、間口が六間(約十メートル)もある珍しい造りで、船大工の住居兼作業場であったと思われる。
空き家になったものの、地域の人びとにとって運河と漁船と古民家は、街の歴史とともに紡いできたかけがえのない風景。地元のNPOが古民家を保存したいと声を上げ、富山県中央古民家再生協会に相談が持ち込まれた。
「雨漏りの跡があるので、まずは外回りを点検補修する必要がありますが、開放的な空間なので改修設計の自由度も高い。桜並木の川沿い、静かな時間が流れる絶好のロケーションと貴重な間口の広さを活かして、人が集い、街と歴史を体験する場に活かせないか」と富山県中央古民家再生協会は期待と想いを寄せる。

1階の作業場の奥行きは4間半(約8m)。壁で小割りにされていない開放的な空間で、店舗などさまざまな使い方が考えられる。2階の作業場は奥行きが7間(12.7m)もあり広々と使える。梁は5.5mの1本もの。貴重な地松が使われている。
彫り物ではなく板の割れを活かした珍しい欄間。1階の作業場は土間を打たない野趣ある空間。